政治資金への素朴な疑問
リード
「倫理的意識が高い」といいづらいわたしが倫理的な意義を含む「政治とカネ」についてブログを更新しました。
さて、「政治とカネ」の報道記事を見るたびに疑問に思うことがありました。
年末年始のおやすみのなかで、この疑問を着想点にしてブログにしてみました。
また、政治資金規正法の骨格をなす条文については、随時図解をしています。参考にしてください。
1 政治資金規正法の無知に基づく偏見
(1)訴追
政治献金が政治資金規制法に違反して、関係者が訴追されることがあります。
(2)賄賂のようなもの❓
政治資金規正法を特に知らない状態でわたしはこの報道を見聞きするならば,「国会議員への賄賂のようなものがあった」と認識していました。
(3)賄賂
ところで、国会議員が職務の対価に金銭の授与を受ければ、収賄罪が成立します。そのため、国会議員がみずから政治献金を授与するならば、収賄罪が成立する可能性があります。
(4)賄賂の回避
それでは、国会議員は政治資金を受けながらも、収賄の疑義を回避するにはどうするのか。
「国会議員は資金を管理する団体を作り、この団体が政治献金を受けとります。こうして国会議員は収賄の疑義を回避しつつ、お金を授与を受けるものだ」と思っていました。
もっとも、この金銭の流れは賄賂の成立を回避するためだけのもので、その実態は賄賂です。
(5)賄賂罪では適法できない事案を政治資金規正法により捕捉
そのため「政治資金規正法は収賄罪では捕捉しづらい上記事案を規制するものだ」とわたしは思っていました。
(6)あらためて政治資金規正法の無知を確認
もちろんこのような政治資金規正法の理解は、間違いです。
2 政治資金規正法
(1)目的
今回のテーマは「政治とカネ」。そして、その適用法律は政治資金規正法です。政治資金規正法の条文を確認します。
まずは目的です。
「この法律は、議会制民主政治の下における政党その他の政治団体の機能の重要性及び公職の候補者の責務の重要性にかんがみ、政治団体及び公職の候補者により行われる政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため、政治団体の届出、政治団体に係る政治資金の収支の公開並びに政治団体及び公職の候補者に係る政治資金の授受の規正その他の措置を講ずることにより、政治活動の公明と公正を確保し、もつて民主政治の健全な発達に寄与することを目的とする。」と
あります。
図解すると下のようになります。
図解
(2)理念
ア 条文
それでは次に政治資金規正法の理念を確認をします。
「この法律は、政治資金が民主政治の健全な発達を希求して拠出される国民の浄財であることにかんがみ、その収支の状況を明らかにすることを旨とし、これに対する判断は国民にゆだね、いやしくも政治資金の拠出に関する国民の自発的意思を抑制することのないように、適切に運用されなければならない。
2 政治団体は、その責任を自覚し、その政治資金の収受に当たつては、いやしくも国民の疑惑を招くことのないように、この法律に基づいて公明正大に行わなければならない。」とあります。
図解すると下のようになります。
イ 感想
(ア)憲法上保障される政治献金
え!!
すごく意外です
政治資金規正法は国民の政治献金を憲法上の政治活動の自由と位置づけこれを強く保障する側面が極めてつよい法律です
確かに政治献金は憲法上の人権として保障されます。(詳しくは八幡政治献金事件https://www.cc.kyoto-su.ac.jp/~suga/hanrei/4-3.html)
そのため、政治献金は、政治資金規正法においても保障されます。
(イ)政治献金への制約は慎重
一方で、政治献金が引き起こす政治腐敗等の重大な悪影響を考慮するならば、政治献金に対し強度な規制をしているものとおもっていました。しかし実際には、政治献金への制約にはものすごい慎重な配慮をすることを「理念」によって宣言しています。
(3)制約
ア 制約の類型化
とはいえ、政治献金を制約する規定(政治資金規正法21条21条の3)はあります。(なお、右の条文以外にも政治献金の制約条文はあります 『政治資金規正法22条の3、22条の4、22条の5、22条の6』など、もっともこれら条文は後述する制約理由とはことなります)
(イ)解説
図解
もっとも、その規定の態様は献金者に対する過保護の視点からおこなってます。すなわち政治献金が自由な意思による政治献金とは言い難いものを類型化し、この類型化をもって政治献金を制約しています。
イ 後見的制約
(ア )概要
この制約は、直感的に理解しづらいものがあります。
なぜならば、この制約理由を端的にいうならば「未成年がタバコを吸ってはいないもの」と同様だからです。未成年を社会全体で保護しようとの建て付けには合理性はあります(いわゆる後見的制約)。一方で、未成年ではない大人がおこなう政治献金について、未成年に対する保護と同様の理由で規制してします。ですから、この制約理由は非常に理解しづらいです。
(イ)献金者の自由意思
言い換えてみます。
政治献金は制約されます。その根本的な理由は、「政治献金は政治腐敗と密着した関係にあるので政治献金を制約する」とはいっていません。
その根本的な理由は、過剰な献金は本人の意思に反した政治献金であり、この場合は本人の自由意思に反した政治献金になってるからです。そこで、「その献金は制限される」というなんとも過保護な規定です
(ウ)献金相手の特殊性
それではなぜ政治資金規正法は、過剰な政治献金を想定するのか❓
それは政治献金の相手が権力を行使しうる立場にあります。
その相手から政治献金の要求を受ければ、献金したくなくても献金の強要がおきる可能性があります。
そのため、このような状況を想定して規定があるのでしょうが、、
(エ)刑法
そもそもお金の受領ついて、相手の意思に反しお金を受領する行為は恐喝です。恐喝は刑法上の犯罪行為です。またこのような加害行為をする人が公務員であれば、特別公務員職権濫用罪(刑法)に該当します。
そうすると政治献金という性質上、献金者の自由意思を強く保護する必要性はわかります。しかし、あえて政治資金規正法をもって献金者の自由意思による政治献金を規定しなくても、上に挙げた基本的な法律である刑法をもって十分に抑止は可能です。
(4)別の設計
ア 冒頭
それでは成熟した大人を過保護に扱う設計ではなく、別の設計をもって政治にお金がながれる建て付けの設計は可能なのでしょうか。
イ 政治献金全面禁止
(ア)さいしょに
まず思い浮かぶのは「政治献金を全面的に禁止する」という制度設計です。それでは「政治資金の献金そのものを全面的に禁止する」という設計はどうでしょう。
(イ)検証
確かに、政治献金を全面的に禁止をすれば、政治献金により生じる政治腐敗は防止できます。しかし、そもそも政治献金行為は憲法上の人権として保障されている。
(ウ)結論
よって、この設計は採用できません。
ウ 政治献金部分制限
( ア )概要
それでは次に政治献金を部分的に制約するという設計です。
具体的には政治家自体への政治献金は禁止します。その代わり、政治家自身が所属する団体に対しての政治献金についていは自由にする、という設計です。
(イ)検証
a 問題提起
上述のように政治献金は憲法上保障されています。そうすると献金者が献金したい政治家に献金できないこのような設計は、違憲のようにも思えます。しかし、政治献金がもたらす政治腐敗を考慮するならば、政治献金のへ制約はやむを得ないといえます。
もっとも、この設計は献金者が献金したい政治家への献金を禁じています。このような制約はやむをえいな制約といえるのでしょうか
b 論証
(a) 制約の必要性
上述のように政治献金への制約の必要性は認められます。
(b) 制約の相当性
もっとも、当該制約は憲法上保障される重大な人権である政治献金であるところ、その制約は、不当に過酷な制約となり違憲となりうる可能性もある。
この設計であれば献金者の献金は制約されます。もっとも、政治献金には重大な悪影響が生じることも看過できません。そして、この設計において、献金者は献金したい政治家の所属政党に献金をすることを許容しています。そいて、この献金は政党を介して、献金者の献金したい政治家にカネが流れることも十分にありえます。そうであれば、献金者の献金の意図はこの献金を通じて実現するとこと、この制約は不当に過酷な制約ではないように思えます。
しかしながら、政党に献金された政治献金は献金者の意図とはことなる形で運用または支出される可能性があります。また政治家はすべからく政党に所属しているもものではないところ、この設計では政党に所属している政治家と政党に所属していない政治家との間において、政治献金の受領の点から圧倒的な格差を助長する結果を招来し、このような資金力が政治家間の公正な競争を阻害するものといえます。
よって、この設計は、不当に過酷な制約といえます。
(ウ)結論
以上からこの設計を採用することはできない。
(5)政治資金規正法を再検討
ア 再検討開始
それでは、次にどんな設計にするべきであろうか❓
ここでようやく、政治資金規正法における政治献金の制約の設計を再検討してみようと思います。
イ 制約内容
その設計は原則として献金者は献金したい政治家の指定した資金管理団体に自由に政治献金ができます。もっともこの献金には献金額の上限があります。また献金者と政治家がすでに利害関係等がある場合には政治献金はできません。
ウ 論証
(ア)政治献金の保障
a 資金管理団体
この点、献金者の献金は特定の政治家に直接政治献金ができるわけではありません。しかし、献金したい政治家が代表をつとめる資金管理団体に献金をすることができます。そして、この資金管理団体は上述のように代表者が献金したい政治家であるところ、そこで献金されるお金はその政治家の意図により支出します。そのため献金者の献金意図が実現される政治献金なります。
b 届け出・公開
またその政治団体は選挙管理委員会に届出をする必要があります(政治資金規正法6条)。また政治団体は適宜収支報告を選挙管理委員会に報告する必要があります。このような手続きは、政治献金にともな右事務処理手続きを煩雑に政治献金の自由を制約している面があります。しかし、政治資金が政治腐敗を招来する性質ものである以上、その支出に監督者の下、支出内容を公開するのは、当然であるようにおもいます。
c 結論
そうすると憲法上保障される政治献金は十分に保障される設計になっているといえます。
(イ)政治腐敗の防止
政治腐敗の防止については、政治献金の保障の項目において上述してあります。この制約により。政治腐敗の防止はできます。
3 総括
そうすると、
政治資金規正法のこの設計は献金者の政治献金の自由を保障しながら、政治献金によりは発生しかなねない政治腐敗を防止しうる最適な設計になっているようなしてきました.
政治資金規正法の条文および解説書を読んだ直後には、この設計には違和感を感じました.そこで、他の設計により政治献金の自由を保障しつつ、政治腐敗を発生させいない設計をかんがえました。しかし、その他の設計は現行の法体系と相容れないものとなりました。
一方で、この政治資金規正法の制度はわるくない
ともいいきえれない。。。。
ですね
僕ごときがごちゃごちゃ考えたところで、
もはやすでにこのような考えを盛り込んだうえで
政治にお金が公正にながれるような
制度設計がされているのですね。
4 参考文献
(1)著作情報
「わかりやすい政治資金規正法(著者:岩尾隆 出版社:ぎょうせい)」
(2)感想
過去に公法系の勉強をした人にとっては、とても読みやすい内容だと思います。説明が難儀してしまいそうな箇所においても、平易かつ簡潔な記述が徹底しており、執筆者の頭のキレに敬意をもつようになりました。ただ巻末には語句検索を設けて欲しかったです。
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